中高生によるJ-PARCでのミュオンビーム実験の成果と意義

中高生による世界初のミュオンビーム実験

2025年5月5日から6日にかけて、宮城県仙台市の加速キッチン合同会社の支援を受けた4人の中高生が、茨城県東海村にあるJ-PARCでミュオンビーム実験を行いました。これは、J-PARCで中高生がビーム実験を行う初めての試みであり、彼らが科学への探究心を実現するための重要なステップです。

J-PARCとは

J-PARC（大強度陽子加速器施設）は、高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構が共同で運営する、世界最高水準の加速器です。中性子やミュオンなどの量子ビームを駆使し、素粒子物理や材料科学、生物学など多岐にわたる研究が行われています。

実験の概要

本実験は、加速キッチンの田中香津生代表をはじめとした研究者たちの協力のもと、4名の中高生の提案に基づく3つのミュオンビーム実験が実施されました。彼らは事前に準備を行い、一定の期間にわたりミュオンビームの特性を調査しました。大学生スタッフがそのサポートを行い、実験の成功を支えました。

中高生の提案実験

参加した中高生はそれぞれ異なるテーマで実験を行いました。

課題①：2次元ビームモニタの性能評価

3年生の松下千穂里さんは、CERNでの実験経験を持つメンバーです。J-PARCでは短時間で集中的に到来するミュオンの信号を取得するため、工夫を凝らしました。3点にビームを照射し、それぞれの解析を進めることが期待されています。

課題②：ミュオンビームの速度測定

名古屋大学附属中高等学校の川道かのんさんと淺野颯良さんは、宇宙線ミュオンの速度実験に取り組みました。2つの検出器の距離を変えながら到来時間差を測定し、その結果からミュオンの速度を解明します。この活動は、先の発表会での受賞経験もあり、質の高い研究がなされています。

課題③：コンクリートによるミュオンビームの遮蔽効果

青野真優さんは、自宅で作成したコンクリートを用いて、ミュオンビームの遮蔽効果を調査しました。2つの検出器を設置し、コンクリートの前後でミュオンの信号強度を測定する予定です。

実験の成果と今後の活動

中高生たちは実験のデータ解析を進め、成果を論文として学会発表することを目指しています。松下さんは、2025年5月には日本地球惑星科学連合の大会で「2次元ビームモニタの性能評価」を発表することが決まっています。彼らの挑戦は、科学に対する若者たちの関心を高め、新たな世代の研究者を育てる貴重な経験となることでしょう。