紛争とコレラの脅威に晒されるスーダンの子どもたち:ユニセフが挑む人道支援の最前線
アフリカ大陸北東部に位置するスーダンでは、長引く紛争が人々の生活基盤を破壊し、未曾有の人道危機をもたらしています。特に2025年に入ってからは、ハルツーム州を中心にコレラが猛威を振るい、既に数千人規模の感染が確認され、多数の命が奪われる事態に発展しています。この致命的な病は、紛争によって最も脆弱な立場に置かれた子どもたちに、深刻な脅威を与えています。ユニセフ(国連児童基金)は、スーダン連邦保健省をはじめとするパートナー機関と連携し、この複合的な危機から子どもたちの命を守るための緊急支援活動を精力的に展開しています。
紛争が招いた避難とコレラの蔓延
ハルツーム州は、残酷な紛争が勃発して以来、約300万人もの住民が住み慣れた家からの避難を余儀なくされました。そして、今年に入ってからは、一部の地域へのアクセスが可能になったことで、3万4,000人以上が帰還を果たしています。しかし、彼らが戻った故郷は、水や衛生といった基本的なサービスがほとんど機能せず、住居も甚大な被害を受けている現状です。この地域全体で、推計100万人以上の子どもたちが紛争の影響を受けながら暮らしています。
ハルツーム州では先月、主要な発電所が度重なる攻撃を受け、電力供給が完全に停止しました。これにより、水供給システムが麻痺し、安全で清潔な水へのアクセスが極めて困難になっています。多くの家族は、もはや安全とは言えない汚染された水源の水に頼るしかなく、特に避難民が密集する居住地では、コレラをはじめとする水媒介性の感染症リスクが飛躍的に高まっています。その結果、5月15日から25日のわずか10日間で、コレラ感染報告数は1日あたり90人から815人へと、驚くべき9倍もの急増を見せました。これは、人々の命がまさに危機に瀕していることを示しています。
栄養不良というもう一つの脅威
コレラ感染の拡大に拍車をかけているのが、深刻な栄養不良問題です。ハルツーム州内のジャバラ・アウリアとハルツームの二つの区域では、飢餓の危険が切迫しています。この二つの区域だけで、州全体の急性栄養不良に陥った子ども30万7,000人のうち、実に33%を占めています。そのうち、2万6,500人もの子どもたちが、重度の急性栄養不良という、最も深刻な状態に苦しんでいます。体力が著しく低下している栄養不良の子どもにとって、コレラや重度の下痢症は、迅速な治療が施されなければ、あっという間に命を奪いかねない非常に危険な疾病です。
ユニセフ・スーダン事務所代表のシェルドン・イェット氏は、現状の危機感について次のように語っています。「ユニセフは、パートナー団体と共に、コレラや重度の急性栄養不良に極めて脆弱な子どもたちに対し、基本的な保健ケア、清潔な水、そして良質な栄養といった、命を守るための支援を迅速に届けるべく全力を尽くしています。これは時間との闘いです。毎日、新たな子どもたちがコレラと栄養不良の二重の脅威に晒されていますが、これらは適切な支援さえあれば、予防も治療も可能なのです。」
ユニセフの多角的な「命を守る」支援活動
ユニセフは、スーダンにおけるコレラ危機に対し、多角的なアプローチで支援活動を展開しています。その中心となるのが、ハルツーム州のリスクが高いコミュニティにおける重要な水インフラの再構築と維持です。
水供給と衛生環境の改善: 水処理に必要な化学薬品(ポリマーや塩素)を供給し、カラリとオールド・オムドゥルマンの100万人以上の住民に水を供給するアル・マナラ浄水場の運転維持のため、1,000キロボルトアンペアの発電機を提供しています。また、家庭用の水処理薬品を配布し、安全な飲料水を確保するために水供給施設に塩素処理装置を設置。緊急対応チームを動員し、水の塩素処理と消毒活動を支援しています。さらに、地域住民に対しては、対面での会話やソーシャルメディアを通じて、コレラの感染源、症状、そして予防に関する重要な情報を積極的に発信し、啓発活動を強化しています。
予防接種と治療ケアの強化: 2025年に入ってから、ユニセフはスーダンに対し160万回分以上もの経口コレラワクチンを提供し、紛争の影響が続く地域での予防接種キャンペーンを支援しています。また、コレラ治療キットの供給、コレラ治療センターへの医療スタッフの派遣支援を通じて、治療体制の強化に貢献。感染予防対策に関する公衆衛生担当官や、現場で状況を監視する地域住民への研修も実施し、地域の対応能力向上を図っています。
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栄養サービスの継続: 医療ケア施設内にある105か所の外来患者管理プログラムと4か所の安定化センターを通じて、命を守るための栄養サービスの提供を途切れることなく続けています。
ユニセフの活動は、紛争によって日常が奪われ、コレラと飢餓の脅威に晒されるスーダンの子どもたちにとって、まさに希望の光です。時間との闘いの中で、彼らが日々直面する過酷な現実を変えるためには、国際社会からの継続的な関心と支援が不可欠です。私たちは、未来を担う子どもたちの命と健やかな成長を守るため、ユニセフの活動を支援し続けることが求められています。