建設現場に革命をもたらすリアルタイムデジタルツイン技術の実証実験
建設業界では、複雑化する施工現場に対応するため、品質管理や安全管理の方法が求められています。この課題に対して、株式会社コルク、ソフトバンク株式会社、株式会社アスク、セーフィー株式会社の4社が新たな試みとして、リアルタイムデジタルツイン技術を導入した実証実験を行いました。このプロジェクトは、2024年8月3日から11月27日までの期間に、清水建設が計画する相鉄鶴ヶ峰付近の連続立体交差工事現場で実施されます。
背景と実施内容
近年、建設業界では定期的な現場巡視などの従来の方法では追いつかない問題が増えています。そこで、クラウドカメラの普及が実現したことを背景に、遠隔から現場の状況をリアルタイムで確認する手段が模索されています。今回の実証実験では、「リアルタイムデジタルツイン」技術を用いて、施工現場のデータを仮想空間にリアルタイムで再現し、さらなる可視化の強化を目指します。
清水建設、コルク、ソフトバンク、アスク、セーフィーは協力し、BIM/CIMクラウド「KOLC+」を基に現場のデジタルツインを構築しました。これにより、重機や作業員の3Dモデルがリアルな位置情報とリンクし、施工現場を視覚化することが可能となりました。この技術により、現場にいなくても施工の進捗や安全状況を確認でき、迅速な意思決定が可能になります。
実用化のメリット
実証実験の結果、俯瞰的に工事現場全体を把握することで、重機と作業員の動線確認や、高さにある架線との離隔や杭打機械の位置をリアルタイムで追跡できることが分かりました。施工管理者はデジタル空間の情報を基により精密な管理が可能となり、不具合の未然防止や品質向上が期待されます。
四足歩行ロボット「Unitree Go2」を使った巡回も今後の展開に含まれ、より多くの情報を自動で取得し、リアルタイムにデジタルツインに反映させることが計画されています。これにより、従来の人による巡回作業の負担が大幅に軽減され、効率的な管理が実現します。
見据える未来
今後、関係各社は自動遠隔巡視機能の強化や立入禁止エリアの設定を進め、デジタルツインとの統合が進む予定です。特に、ソフトバンクの衛星通信サービス「Eutelsat OneWeb」を活用することで、通信が困難な地域でも現場状況の把握が可能となる見込みです。
また、セーフィーは、AI機能を持つクラウド録画カメラとの連携により、立ち入り禁止エリアへの侵入をリアルタイムで通知するシステムを構築する方針です。これにより、現場の安全管理が強化され、建設業界全体の効率化が進むことが期待されます。
この実証実験を通じて、リアルタイムデジタルツイン技術は施工管理の課題解決に寄与するだけでなく、施工の効率性や安全性を向上させ、未来の建設プロジェクトの在り方を変革する力を持っているといえるでしょう。