累計9,000万円突破! 一ノ蔵が醸す希望の酒「未来へつなぐバトン」 東北から能登へ繋がる支援の連鎖
宮城県大崎市に本社を構える老舗酒蔵、株式会社一ノ蔵は、東日本大震災からの復興支援プロジェクト「未来へつなぐバトン 醸造発酵で子どもたちを救おうプロジェクト」の一環として、特別に醸造した日本酒「一ノ蔵特別純米原酒3.11未来へつなぐバトン」の売上金全額を公益社団法人ハタチ基金へ寄付しました。今年で14回目を迎えるこの息の長い取り組みは、本年の寄付金519万1,021円を含め、累計寄付額が9,186万4,778円に達しました。単なる金銭的支援に留まらず、震災を経験した子どもたちが次世代を担う「恩送り」の循環を生み出す、心温まる活動として注目を集めています。
震災の苦難から生まれた「恩送り」の精神
2011年3月11日、東日本大震災は一ノ蔵の本社がある大崎市にも甚大な被害をもたらしました。震度6強の揺れに襲われ、一時は酒造りの継続すら危ぶまれるほどの困難に直面したといいます。しかし、全国各地から寄せられた温かい支援が、社員たちの大きな心の支えとなり、一ノ蔵は早期に再起の一歩を踏み出すことができました。
この経験から生まれたのが、「賜ったご恩に少しでも報いたい」「被災した者同士が手を取り、助け合いながら前に進みたい」という強い想いでした。当時の議論の中で、都市や産業の復興が報じられる一方で、被災した子どもたちが生活や進学、将来への大きな不安を抱えているという切実な問題に直面していることが明らかになりました。そこで、一ノ蔵は受けた恩を次の世代へと繋ぐ「恩送り」の形として、自社の本業である「醸造発酵」の技術を活かした支援プロジェクトを立ち上げることを決意。2011年12月、「未来へつなぐバトン 醸造発酵で子どもたちを救おうプロジェクト」が発足しました。このプロジェクトの核となるのが、特定のお酒の売上全額を子どもたちの支援に充てるという、前例のない挑戦でした。
「未来へつなぐバトン」が繋ぐ希望
本プロジェクトのために特別に仕込まれるのが「一ノ蔵特別純米原酒3.11未来へつなぐバトン」です。このお酒は、宮城県産の酒造好適米「蔵の華」を100%使用し、精米歩合60%、アルコール分17%で醸される純米原酒。その名の通り、震災で被災した子どもたちの継続的なケアを目的とした公益社団法人ハタチ基金への寄付を前提として製造・販売されています。消費者がこのお酒を購入するたびに、その売上金全額が子どもたちの未来のために活用されるという、まさに「飲んで支援する」という形でバトンが繋がれていく仕組みです。
今年の2月12日に発売されたこの特別な一本は、全国の酒販店や消費者の共感を呼び、見事に出荷を完了。そして5月22日、集まった売上金全額の寄付贈呈式が一ノ蔵本社で執り行われました。
能登半島地震にも響く、東北からの「バトン」
贈呈式には、一ノ蔵の鈴木整社長に加え、公益社団法人ハタチ基金の代表理事である今村久美氏が能登半島地震の被災地である石川県からZoomで、また同基金事務局の芳岡千裕氏が来社して参加しました。この式典では、ハタチ基金の活動報告が行われ、現在の支援のあり方や、東日本大震災当時「コラボスクール」で学んでいた子どもたちが成長し、今度はスタッフとして能登半島地震の被災地へ派遣されているという感動的な報告がありました。
「支えてもらったから、今度は自分が力になりたい」――。震災を経験した若者たちが、その困難を乗り越え、自らが支援の担い手として活動する姿は、まさに「未来へつなぐバトン」が具現化したものです。東北で受けた支援が、遠く離れた能登の地で新たな支援の輪を生み出す。この「恩送り」の循環は、多くの人々に希望と勇気を与えています。
贈呈式の最後に、ハタチ基金事務局の芳岡氏から一ノ蔵の鈴木社長へ感謝状が手渡されました。感謝状には、震災から14年が経過し、全体的な復興が進む一方で、過疎化が深刻化し、子どもたちの部活動や習い事などの体験機会が縮小している地域があるという現状が記されています。しかし、どんな環境に生まれても、子どもたちに寄り添い、チャレンジを支える存在が地域の中でますます重要になっていると強調。そして、「皆さまからのご寄付は、東北の子どもたちがどこに生まれても、未来を切り開くたくましさと優しさをはぐくめるよう、大切に活用いたします」と結ばれていました。
一ノ蔵の「未来へつなぐバトン」プロジェクトは、単に経済的な支援を行うだけでなく、人々の心と心を繋ぎ、世代を超えて希望を受け渡す、真に価値ある活動です。この日本酒が醸し出すのは、お酒の味わいだけでなく、被災地への深い思いやりと、未来への確かな希望なのでしょう。2026年2月中旬には次回の出荷が予定されており、この「恩送り」のバトンは、これからも力強く繋がれていくことでしょう。